大和郡山市の郡山高校の正門近くに、詩人で教育者の森口武男の詩碑「金魚とねこ」があります。詩は次の通りです。
金魚が
鉢でおよいでいる
ねこがじっと見ている
どうしたの?
金魚は泳ぎをとめてきく
ねこはだまっている
あたいを写生?
金魚は
頬を鉢にすりよせる
そこで
ねこは
鉛筆と紙をさがしにいく
森口は郡山高校の前身、旧郡山中学の卒業で、詩碑は森口の同期生が建てたそうです。
奈良高校で教えている時、文芸部を受け持ちました。教え子の書いた詩などの指導をしていましたが、「教師というのは勝手なものだ。自分で作ることもせず、えらそうなことを言う」と非難され、35歳から詩を始めたとか。「とか」と書いたのは、インターネットで森口のことを調べていて、そのような文章を見つけたからです。
ユーモラスな詩です。本来はねこは金魚の天敵のはずです。ねこが金魚を見ていたのは、ひょっとすると、食べてしまおうと思っていたのかもしれません。でも、金魚が“人なつっこい”ので、ねこは金魚が考えたように、写生をすることに方針転換したのかもしれません。
以前見たアニメ映画「あらしのよるに」を思い出しました。「どこか似ている」。そう思いながら、柔らかい文字で書かれた碑文を、ゆっくりと目で追いました。(S)=2018年2月15日撮影