近鉄奈良駅とJR奈良駅の間、奈良市小川町に伝香寺(でんこうじ)があります。寺は春に脚光を浴びます。奈良市の白毫寺(びゃくごうじ)の五色椿、東大寺開山堂の「のりこぼし」とともに、「奈良三名椿」に数えられるからです。
普通の椿は咲き終えると、花の形のまま落ちます。散り椿は桜のように、花びらを散らします。
小さな本堂の横に散り椿が並んで2本。1本は背が高く4.5メートルほどあります。訪れた時、一面にピンクの花をつけていました。強い色ではないので、落ち着いています。花びらは約20枚もあり、少し重みが見えるのですが、色の柔らかさのおかげで、それほどボテッとした感じはしません。
寺は筒井順慶の菩提を弔います。この椿は武士椿(もののふつばき)とも言われます。まだ咲き誇っている時に、花びらを1枚ずつ散らす様散り際の良さを、若くして亡くなっ順慶に重ね合わせているからでしょう。(S)=2018年4月3日撮影